『ヒトのことはヒトに訊け』 - クマ著
ヒトというのは総じて我々ヒグマに対しては臆病で、
通常山で遭っても過度に恐れる必要はない。
特に渓流で魚を捕っているヒトは危険度が小さい。
特徴は細くて長い棒を意味不明に振り回していることだ。
この行為を見たければ、藪に隠れてこっそり見ること。
間違ってもそのヒトに近づいてはいけない。
同様に、我々の好きな新芽・山菜を採っている最中のヒトは危険性が小さい。
驚かすことなくおおらかにその場所を譲ってやればよい。
仮にこれらのヒトと遭遇した場合は、よくヒトの様子を見ながら
穏やかに立ち去ればまず問題は起こらない。
ここでパニックに陥り彼らを打ち倒したりすれば、
十倍の報復が待っていると思ってよい。
ヒトは仔熊であろうと容赦なく殺しにかかる。
この地域に暮らすヒグマ全体の安全のために、
そのような暴挙は犯してはならない。
いずれにせよ、ヒトというのは嗅覚が極めて鈍感であり、
我々ヒグマのほうで、
なるべくヒトを察知し衝突を回避しなければならない。
特にオレンジの衣服を着た銃を持つヒトの一部は極めて凶暴かつ攻撃的で、
見境なく我々を殺そうとするだろう。
このタイプの異常性を持ったヒトにはあらゆる穏やかな回避法は通用しない。
相手を確かめるために立ち上がるのも厳禁だ。
速やかにササ藪に突っ込んで逃げるか、
万が一それができなければ全力で突進し打ち倒すしか生き残る方法はない。
ただし、ヒトは知能が高く、学習能力が高い。つまり個性のばらつきが激しい。
正常なヒトなら悶着・軋轢を回避する方法が残されている。
つまり「異常ビト」をいかに正確に見極められるかどうかが、
マンカントリー周辺で我々ヒグマが暮らすコツである。
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